相次いで発覚する富山市議会議員の政務調査費不正受給が話題になっている。「快く辞めます」はマスコミの前で、当事者の一人が吐いた言葉。「潔く辞めます」ならまだしも、「快く辞めます」とはどういう心理なのか。「快い」とは「気持ちがいい、受ける感じがいい」の意味。開き直りなのか、悪事をなしたという反省が本人から伝わってこない。
この不正受給問題は氷山の一角だろう。豊洲新市場の盛り土問題など、全国でさまざまな議員や役人の腐敗が闇に隠れていると思わざるを得ない。
ある通夜に参列した。浄土真宗の僧侶が読経を始める。鍛えあげられた声はしっかりとして野太い。読経は7時から始まり、ぴったり7時30分に終わった。
読経の内容は3、4種類だったと思うが、現代語訳のものも含め内容は全く分からない。聞き取れたのは、最初、途中、最後に聞こえてきた「南無阿弥陀仏」の声だけ。他の参列者もたぶん同じだっただろう。(浄土真宗本願寺八世蓮如の御文「されば朝は紅顔ありて、夕べには白骨となる身なり」も聞き取れた。仏教の無常観を述べたもので、以前本で読んだことがある。)
それにしても参列者にとって、これらの意味不明な読経を行うことはどのような意義があるのだろうか。誰に向かって読んでいるのだろうか。昔、小学校低学年の姪が「呪文みたい」と言ったのを思い出した。
「陸王」(池井戸潤、集英社)。零細老舗足袋会社の経営は時代の変化とともに縮小傾向にあった。このままではじり貧、倒産になると考えた主人公の経営者は、ランニングシューズを起死回生の新商品として開発を進めるが、大手シューズ会社、銀行などの障害、抵抗を受け、窮地に追い込まれることもしばしばだった。池井戸潤の新作は、今回も勧善懲悪のストーリーで期待を裏切らなかった。主人公の誠実さ、誇り、熱意が伝わってくる。
金は古今東西、ほとんどの人間が一番欲しいと思う。しかし、必ずしも金が一番と考えない者もいる。「本当に必要なものや大切なもの」とは、個人の人生の中でそれぞれ異なる。
「オレにいわせれば、会社が大きいから入りたいという動機は間違っている。大事なのは会社の大小じゃなく、プライドを持って仕事ができるかどうかだと思うね。いい学校を出て、いい会社に入る。その発想の延長上にくるのは、結局のところ会社の看板であり、組織の肩書さ。多くの奴らは、そんなものにプライドを抱いているわけだ。だけど、そんなプライドは所詮、薄っぺらなものに過ぎない」
「好きなことをやれ。見得張ってカッコつけて、本当に好きでもないことをする人生ほど後悔するものはない」
「人生がひとつあれば、そこに苦労の種は無数にある」
「裸の華」(桜木紫乃、集英社)。同じ著者の「星々たち」にも、ストリッパーの話があった。本書では、二十歳の誕生日に東京でストリップの初舞台を踏んだ主人公が左足を骨折して廃業し、出身地の北海道に戻って、札幌でダンスショーを売り物にする店を開く。スタッフは20代の二人のダンサーと技術力のあるバーテンダー。しかし、そのうちの一人のダンサーの上京をきっかけに一年後に店を閉め、主人公は改めてストリッパーとして再起する。
夢の意味が「将来実現させたいと思っている願望」であるとしたら、主人公の夢とは何だったのだろう。男の性的欲望を満足させようとするストリッパーという仕事も、彼女の年齢とともに、その魅力は薄らいでいく。やはり、若いうちが華なのだ。時間の経過と共に、夢を達成しようとする場所も変わる。だからこそ、「誰にも、迷っている暇などないのだった。限られた時間をどう使うか。どう生きるか、どう死ぬか。ここからどう飛び立つか」がポイントになってくる。
覚醒剤使用で逮捕され、執行猶予4年の判決を受けた清原和博の独占インタビューの中で、清原が目を赤くして吐いた言葉。プロ野球のスーパースターだった清原が引退後、手にした覚醒剤が彼の人生を暗転させた。マスコミは覚醒剤使用が疑われる他の有名人と同様、面白おかしく彼の逮捕を追い続けた。
インタビューを見る限り、清原は更生に向けて日々を過ごしており、自分の心情を正直に吐露していることに好感がもてる。「息子に会いたい」という言葉に、一生かかっても二度と覚醒剤を手をしないという親としての清原の後悔と決意が伝わってくる。しかし番組ゲストの大学教授は「覚せい剤は脳の中枢を犯し、再犯率は高い」と話す。
「自分が逮捕され、多くの知人や友人が自分の元を去っていきました」。しかし両親や友人の元ピッチャー佐々木だけでなく、多くの清原ファンが、このインタビューを好意的に見たのではないか。
中国の国内情勢はひっ迫している。成長率の鈍化、首脳部内の権力闘争、不動産・株・人民元の下落、外貨準備高の激減、300兆ともいわれる不良債権、外国企業の撤退…。すでに中国経済は破綻しているのではないか。それだけに習近平政権は国民の不満を軍事へと向けさせようとしている。尖閣諸島では中国海警局の監視船と海上保安庁の巡視船が対峙し、中国は海自の護衛艦が先制攻撃できないことで挑発行為を繰り返す。
「日本核武装」(高嶋哲夫、幻冬舎)。本書はハーバード大学を卒業した日本人、アメリカ人、中国人の友人3人が各国の中枢部に入り協力して、元自衛隊幹部の核武装計画を未然に防ぐストーリー。軍事の裏付けなき外交は机上の空論であり、日本が核武装することにより、日本の戦争抑止力、外交力は高まるという考えは理解できる。しかし日本が核保有の準備をしていることが公になると、世界はどういう行動を取ってくるか。まずは経済制裁、原油、LNG、石炭などの輸出制限。世界が強調して輸入制限もかけてくる。海外資産の凍結も行う。投資の引き上げもやるかもしれない。それより、戦後70年、日本が築きあげてきた平和国家のイメージが一気に崩れ去る。日本経済は失速し、完全に孤立する。太平洋戦争前と同様の状況になる可能性も大きい。それでも個人的には日本は核武装すべきと思う。
若く挫折しかかった現役プロボクサーの若者と、それを立ち直らせた元ボクサー4人の老人の物語。題名の「春に散る」は、その若者が世界タイトルマッチで敗れると思って読み進んでいたが、そうではなかった。主人公が持病の心臓病で倒れたのだ。
相手に対する思いやりのある言葉や態度で、相手がそれを感じ感謝して、心地よい眠りにつかせることは難しい。自分がそう思っていても、相手が鈍感で自分の思いが多々伝わらないことが多いからだ。「心地よい眠り」。自分もそのような出会いが欲しい。