2014年のノーベル物理学賞に、青色発光ダイオード(LED)の製品化に貢献した3人の日本人研究者が決まった。
「サラリーマンよ、奴隷になるな」は、その一人であるカリフォルニア大学サンタバーバラ校・中村修二教授の発言。彼はこうも言った。「米国ではアメリカン・ドリームを追いかけるチャンスがある」と。
中村はかつて日亜化学工業という徳島の企業に勤めていた時、青色LEDの製造装置に関する技術開発に成功、実用化につなげた。しかし自身の発明は会社に所属するものとして、わずか2万円の報奨金しかもらえなかった。それを不当として裁判を起こし、当初は200億円の価値があるという判断が出たが、最終的には約8億円でやむなく和解した。
社畜という言葉がある。「勤めている会社に飼い慣らされてしまい、自分の意思と良心を放棄し奴隷(家畜)と化したサラリーマンの状態を揶揄したもの」という意味だ。サラリーマンは会社の意向が絶対であり、給与や肩書、社会的保証を代償に、その指示・命令には従わざるを得ない。しかし自らのアイデンティティを犠牲にしてまで会社の奴隷になることを否定する勇気を、どれだけのサラリーマンが持っているのだろうか。
「名利に使われて、静かなる暇なく、一生を苦しむるこそ、愚かなれ」(徒然草)
「翼」(白石一文、鉄筆文庫)。「働くというのは一義的にカネを稼ぐことで、それは僕たちの動物的な生存を確保するための行為だからね。もともとさしたる形而上的な動機も理由も存在しないんだ。だとすると、自分がどうしてもやらなくてはならない仕事とか、自分でなければ決してできない仕事なんて滅多に見つからないし、本来、そういうものが存在する必要もない。・・・よほどの召命感でもなければ、ひとつの仕事を何十年もやり通すなんてきっと無理なんだよ。それが自然なんだ」
生来、怠け者の自分としては、こういう一文に魅かれる。多分、99%の人は金のために働く。「サラリーマンは気楽な稼業と来たもんだ・・・」の時代はとっくに終わったが、サラリーマンであれば、社畜という自覚があっても、毎月それなりの収入を得られる。自分の才覚、運、努力などで、サラリーマン以上に裕福になることができる経営者、商売人、自由業、芸術家なども、カネに振り回される。それだけに、長く続けて「天職」と思える仕事ができる人は幸せなのだろう。石原慎太郎は昔、「息子をサラリーマンにしない法」という本を書いた。
「誰かの不幸を前提にした幸福なんて、この世に存在できるはずがない。人を傷つけてまで幸せになる権利なんて誰にだって、絶対に、絶対にないわ」
「結局、人間は智慧や理性では絶対に行動しないからね。例外なく感情のままに行動する。何より大切なのは感情だ。自分の感情と他人の感情。その感情を見極めることが一番大切だと思うよ」
「空海秘伝」(寺林峻)。高野山に行ったのは10年ほど前だった。入定した弘法大師空海が留まる奥ノ院付近は幽寂な霊気が漂い、都会の喧騒とはかけ離れた荘厳な雰囲気を感じた。
「いかに長く生きようと死を前にすると、この世は刹那でしかない」。煩悩だらけでなかなかそういう心境にはなれないが、やはり、命、心、時間そして自由が貴重なものに思える。
「どんなにつらくとも、生きていまの世を浄土として暮さねばなりませぬ。死後に望みを託さず、いまを生き抜く力を与えましょうの」
「空しいと諦めて今日を生きれば死んでおるが、空しいからこそ今日を弾ませようとすれば、日々、命は創造できる」
「儒教は立派なことを説くが、その通りには生きられぬから裏表のある偽善的な人を作ってしまう」
「かりに人とのかかわりをうまく処する術を心得て栄達したとして、それで人生がどれほど満たされるのだろう」 読了後、youtubeで空海を検索すると、動画の中に次の言葉もあった。
「すべては一人ひとりの命の働きかけから始まる。素直に生きて皆に感謝しなさい。己の魂が喜ぶ生き方をしなさい。さすれば道は開くであろう」
「ラストレター」(さだまさし)。誠意のある真剣な行為、言葉、そして心があれば、相手を感動させることはできるかもしれない。一方、カネやモノという直接目に入るものをもらうことは嬉しい。一時的であれ、相手は心を動かす。しかし、カネやモノで相手の気を引いても、それは永遠の価値を持つものではない。女性を素手で捕まえることは難しい…。
「ヒステリックに思いついたことを際限なく吐き散らす。匿名のバカどものストレスの吐け口からは本当の体温は伝わらねぇ」
「怒って解決するくらいならいくらでも怒るけどサ。ま、イカリは進む船を停めるもの。静かに胸の底に沈めておくよ」
「若い女の子の方が決着つけたがってるわね、すぐに勝ち組とか負け組とか。だめだよぉ、まだ先がある若いうちからさぁ」
「大人になったらな…正しいと思ったことは…ちゃんと言葉にしなきゃ駄目だ」
高倉健さんが悪性リンパ腫のため亡くなった。享年83歳。渥美清、緒方健とともに、好きな俳優の一人だった。
「往く道は精進にして、忍びて終わり悔いなし」。この言葉は、高倉さんが天台宗・比叡山延暦寺の大阿闍梨、酒井雄哉氏と対談した時に酒井氏から贈られたもので『大無量寿経』の中に記された阿弥陀仏の言葉だ。「假令身止 諸苦毒中 我行精進 忍終不悔」(たとい身を、もろもろの苦毒の中におわるとも、我が行は精進にして、忍びてついに悔いじ)「たとえどんな苦毒の中にあっても、すべての人を救い切る『南無阿弥陀仏』を成就するまでは決して精進(努力)をやめない。どんなに苦労しようと悔いはない」という意味だそうだ。
高倉さんはこの言葉を座右の銘にし、「この言葉を阿闍梨さんに戴いて、私は『南極物語』をやろうと決めました」と語ったこともある。 いくつになっても精進を止めない。難しいことだが、彼の生き方に共鳴する人は多いだろう。 遺作「あなたへ」では刑務所の刑務官を演じた。彼は舞台となった富山刑務所の囚人らに対し、こう講演した。「一日も早く出所してください。そして大切な人の所に戻ってください」。
以下、テレビで拾った語録。 「お金のある家に育つか育たないかではなく、自分が与えてもらったことに対して素直に感謝できるかどうかが、その決め手になる」
「自由というのは孤独と背中合わせ」
「ちゃんとした人はちゃんとした手紙を書いてくる」
「自分を深めるのは学歴でも地位でもない。どれだけ人生に感動したかである」
「男が生きていくためには、我慢しなければいけないことがいっぱいあるんだ」
NHK「クローズアップ現代」“最後の時を決められない”。「老いても70%の人が延命治療を希望しない」というデータがある。そして2020年代、日本は「団塊の世代」の人たちの多死時代を迎えるという。
この番組では、どんな死に方をするかは患者が決めることといいながらも、回復が見込めない、そして死が免れない植物人間になって自分の死に方を判断できない患者に対し、医師がその死を勝手に決めることができないという問題を描く。
命の主人公はその人のもの」「本人の意思が尊重されるべき終末期に、どんな死に方をするかは患者が決めること」だが、老いて病気になった場合、どのような死に方が良いのか、幸せかはわからない。
高倉健主演「君よ憤怒の川を渡れ」(1976年公開)をYouTubeで観た。検事が冤罪となり、真犯人を究明するために逃亡を図る。大物代議士と大手製薬会社の癒着、彼らに操られる精神病院院長、真相を探る警視庁警部や検事正、北海道大牧場の娘が物語を深める。
エピローグの新宿で複数の馬が暴走するシーンは少し違和感を感じたが、ハッピーエンド。 寡黙で信念を貫き、毅然として凛々しい主人公と主人公に対し一途な思いを持つ女性。この映画は文化大革命が終結した後の中国でも公開され、高倉健と中野良子が中国人の心をとらえた。 「男はね、死に向って飛ぶこともあるんだ」は娘の父親が主人公を逃亡させるために自らのセスナ機を与えたときに言ったせりふ。
先が見えない不安の中で、東京に向かって必死に操縦悍を握る主人公の姿が胸を打つ。そして40年前のの中野良子も魅力的だった。
「雨の狩人」(大沢在昌)。舞台は東京とタイ。新宿署警部補が、ある殺人事件を契機に関東有数の暴力団と対決する。彼に関わる登場人物の正体が次第に判明していくところが面白い。
「人から好かれようとさえ思わなければ、怖いものがなくなる」は、一匹狼の主人公の言葉。自分をよく見せようとすると、本音を言わず、相手を批判したり、反発したりしない。相手から嫌われたくない、相手を傷つけない「いい人」と思われたいからだ。しかし、それは場合によっては自己保身であり、思いやりや謙虚と勘違いする。
徒然草112段には「信をも守らじ、礼儀をも思わじ。人には言いたいように言わせておけ」とある。生き方や性格は人それぞれ。人に不快感を与えていいとは思わないが、できるだけ本音で生きたい。
「一度つまずいた奴は、腐るか、それを糧に強くなるかだ」
「ビートたけしのTVタックル」。この日のテーマは「成人の日大激論SP 18歳は大人か子供か?」。「損得が…」は、司会の阿川佐和子が「多分、若い子たちってみんな怖いものがないんだと思います」と口にした18歳の若者に言った言葉。
確かにほとんどの人は「自分にとって損か得か」という打算で動く場合が多い。思いやりや自己犠牲とは別の世界にある金、地位、権力、腕力、言葉などの前で損得勘定の思惑が働く。そんな状況になったとき、どう対応するか。そして若いゆえに「怖いものがない」のではなく、「怖いものがあることをまだ知らない」という方が正しいのだろう。
「こんな長寿に誰がした!」(ひろさちや)。寝たきりの祖母が死ねば自分の部屋がもらえると考えた中学生が、住職が檀家を訪れた時、祖母が寝ている部屋に向かってそういった。昔「姥捨山伝説」があったが、長生きは周囲の者に迷惑や心配をかけるのは世の常である。しかし実際は、当然ながら高齢の親や家族の面倒を見ている人がほとんどだ。
30年後の世界がどうなっているのかを予測するNHKスペシャル「NEXT WORLD 私たちの未来 」。不老不死をテーマにした第2回目の放送で紹介された成分「NMN」は長寿に関係する「サーチュイン遺伝子」を活性化させる働きがある成分だが、Ⅱ型糖尿病や心臓、腎臓などの疾患に対して効果があるとともに、劇的な若返りが見込めることが明らかになった。平均寿命が100歳になる可能性も高いという。科学が死や老いの在り方を変えるのだ。肉体の老化が止まり、あるいは若返ることができることをほとんどの人が望むだろうが、その結果、世界や社会の在り方、そして個人の人生観、死生観も「良かれ悪しかれ」大きく変貌する。
「ああ、老いることは苦しみなんだな…」
「聞きたがる死にとむながる寂しがる心は曲がる欲深くなる」(仙厓、老人六歌仙)
「肉親の愛、夫婦の愛、あるいは友人の愛は、絶対不変ではありません。脆いものです」