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(1)出番待ち

福岡の伝統的祭りのひとつ「博多どんたく」。市内各所に舞台が設けられ、さまざまな衣装を着た市民らが、日頃の練習の成果を披露する。ここ博多の総鎮守・櫛田神社も、その舞台のひとつ。

髪を束ね、オレンジ色の着物に緑の帯を締めた6人の少女が、緊張した感じで和太鼓の演技を見ている。次は、自分たちの番だ。

(2)博多美人

福岡市中心部の幹線道路「明治通り」。その両サイドを埋めた観客の視線を浴びながら、数十組の「どんたく隊」がパレードしていく。

両手にしゃもじを持ち、花笠をかぶった、黒と赤の着物姿の女性グループがゆっくりと近づいてきた。無意識に、カメラのシャッターを切った。

福岡に、こんな美しい女性がいたのか。なぜ、このパレードに参加しているのか。普段は、どのような生活をしているのだろう。想像がふくらむ。

(3)金色の輝きに博多の伝統を思う

毎年7月1日~15日にかけて、福岡の夏祭り「博多祇園山笠」が催される。今年が772年目だそうだ。山笠は、静の飾り山笠と動の舁(か)き山笠。

天神ソラリアプラザ飾り山笠の今年のテーマは「黒田決戦石垣原」。来年のNHK大河ドラマが福岡藩52万石の礎を築いた黒田官兵衛に決まったことで、彼をモチーフにした山が他の流れ(各地区の自治組織)でも多く見られた。

博多人形師が腕を振るった神輿の飾りつけを支える担ぎ棒。金色の輝きに博多の伝統を思う。10日からは手拭いの鉢巻きをし、背中に流れ名を書いた水法被を着て、山の舁き縄を腰にさした締め込み姿の博多の男たちが、「オッショイ!「オッショイ!」と掛け声をかけながら、山を担いで博多の街を勇壮に疾走する。

山笠の写真

(4)胡瓜もひまわりも、ただ生きようと一所懸命

園芸については全くの初心者だが、日よけ用の緑のカーテンを作ってみようと、百円ショップで、胡瓜(キュウリ)とひまわりの種、プランター、敷石、土を買ってきた。

胡瓜(キュウリ)は種をまいて三日後、二つの芽が土を押しのけて伸びてきた。翌日、翌々日には芽の数が20以上となり、一つの芽からそれぞれ二つの葉が開き始めた。水だけで肥料はまったくかけないし、植えかえもしないのに、日に日に茎が伸び、葉が大きくなっていく。そして、細い蔓が伸び、小さな黄色の花がふたつ開いた。

一方、ひまわりは種を10個ほど撒いたのだが全く変化なし。諦めかけていたところ、しばらく日が経って、ひとつだけ芽が出てきた。その一つが茎となり、複数の葉も大きくなってきた。気が付くと、薄緑の茎に同色のカマキリがじっとして留まっている。気温35度を超える猛暑日が続く。雨は全く降らない。水やりを怠ると、ひまわりの葉が下を向き、すぐにへたるが、水をやると一時間もしないうちに、まっすぐに戻る。そして、待ちに待った黄色の大輪が開いた。「ひまわりの花は東に向かって咲く」と聞いたことがあるが、不思議とそうだった。

胡瓜もひまわりも、ただ生きようと一所懸命。ちなみに、なぜ、あの小さな種が芽となり、葉や花、実をつけるのか。人間もそうだが、全く不可思議な自然の世界だ。

(5)青い海と白い波、そして砂浜

福島県南東部いわき市にある薄磯海岸。一見、どこにでも見かける青い海と白い波、そして砂浜の1カットだが、この海岸は少し違う。2011年3月に発生した東日本大震災による大津波で、水死した人が流されてきた海岸だ。

この未曽有の震災による死者・行方不明者は約1万8,500人で、死者の90%が津波によって水死したという。そして、ここだけではなく、他の東北地方の太平洋側沿岸部でも、同じような光景が各所で見られたのだろう。今は、静かな美しい海だが、悲しい過去はずっと残る。合掌。

(6)秋の甘木路を歩く

JR九州ウォーキングに初めて参加した。JR九州ウォーキングはJR九州が利用客増のため、春と秋の土日に九州全域で近場の駅を起点としてウォーキングを楽しませる企画だ。今回はJR基山駅から甘木鉄道を使って甘木駅をスタート、甘木歴史資料館(とりたてて見るべきものはなかった)、一ツ木神社(終戦の年3月に米軍がこの地を爆撃し犠牲になった32人の小学生の霊を祀る)、平塚川添遺跡公園(古墳時代の住居が残る)、キリンビールコスモス公園、大刀洗平和記念館(ここにもゼロ戦の機体)を巡り、甘木鉄道大刀洗駅がゴールとなる約9キロの行程だ。

秋の甘木路は薄青の空に白い雲が浮かび、稲刈りが終わった田んぼ、ススキ、櫨(はぜ)、芙蓉などが晩秋の近づきを感じさせる。故郷をイメージさせる川の水もきれいだった。

老若男女がリュックを背にゴールに向かって黙々と歩いている。どれだけの人が途中の風景に目を留めているのだろうか。ただゴールに向かって歩くだけなら、日々の生活と変わらない。ゴールした後、甘木駅に戻って、天然温泉「卑弥呼ロマンの湯」で疲れた身体を癒した。

(7)赤色のイルミネーション

昭和52年に始まった春日市民の祭り「春日あんどん祭り」は市の予算削減の影響か、平成23年から、その名を「春日奴国あんどん祭」に変え、花火大会もなくなった。

文字通り、あんどんを飾るのみで、「古人の霊を慰めるとともに、古人の暮らしの光であった行燈(あんどん)をともして、古人とふるさとをしのぶ」がテーマ。

会場の春日公園では、昼間はよさこい踊りが演じられ、夜は多種多様な手作りあんどんが設置された。写真は、噴水周辺に無数におかれた赤色のイルミネーション。

(8)晩秋の空の下に

近所の新興住宅地をぶらぶらと歩く。小さな公園にある桜の葉が紅く染まり、地上に散っている。風はまだそう寒くなく、うすい青空には白い雲がゆったりと流れていく。

公園で幼児を遊ばせる若い母親、ペットを連れて散歩する高齢者、軽自動車に乗る老夫婦。働いている人も目につく。デイサービスの車、ヤクルトレディ、宅配車・・・。チラシ配りは一枚一円の歩合給と聞いたことがあるが、玄関口にある「セールス、勧誘、チラシお断り」の掲示にもめげず、ポストに投げ込んでいく女性。「ふとんの打ち直しをします」とチラシを手に戸別訪問する男性。一軒の家に何故か表札がふたつ。表札には珍しい姓も多い。日名子、米地、薬内、犬束、岐部・・・。新築の住宅は旧来の瓦屋根の木造住宅ではなくスレート瓦の洋風建築となり、庭は駐車場となった。造園業の市場が縮小していく。

都心の雑踏とは異なる閑静な住宅地にもまた、それぞれの生の営みが晩秋の空の下にあった。

(9)赤い実をつけたピラカンサ

自宅から近い福岡県営春日公園は、駐留米軍板付キャンプの跡地を昭和56年に造営したもので30ヘクタールという広大な敷地を誇る。園内には野球場、球技場、16面のテニスコートなどの本格的な運動施設のほか、芝生広場、散策路、大噴水、自然風庭園、児童遊戯場等の施設が配置されている。そして桜、梅、レンギョウ、モミジバフウ、ケヤキ、樫、銀杏など樹木も多種類で、四季それぞれの散策を楽しませてくれる。

大きな噴水のそばで、赤い実をつけたピラカンサ(和名でときわさんざし、たちばなもどき)が目に入った。鳥たちは、この赤い実もついばむのか。

新緑の季節から猛暑の夏を経て、いつの間にか紅葉(こうよう)の季節へと時は巡る。自然の変化は、「安閑無事」の心境をもたらす一つの要因でもある。

(10)ミカン狩り

日曜日、知人に誘われ、彼が共同で所有する「百笑園」にミカン狩りに行った。たわわに実ったミカンを剪定ばさみで切り取っていくと、すぐに100個、200個が袋に入っていく。しかし、どんなに採ってもミカンはまだまだ枝に充分に残っている。

小学生らも家族連れで一緒に来ていた。子供向けに稲を苗から植えて刈り取ったり、芋堀りの企画もあるが、彼らにとって日常が人工物の中で生活しているだけに、このような自然とのふれあいは貴重な体験だっただろう。

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