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かつて、日本でも高度成長期、賃上げ要求のストライキが発生し、会社側と組合側が対立した。
同じことが今、中国で起こっている。貧しい田舎からの出稼ぎ労働者を農民工として低賃金で雇用し、
「世界の工場」として発展してきた中国が、深圳や広州など華南地区を中心に人手不足に陥っている。
理由は、各企業が人員確保のため賃上げ競争を行っていること、故郷により近い内陸部都市で雇用が
増えたこと、都会に憧れて来たものの実情は周囲に何もない開発区の工場立地であること、
ネットやテレビなどの情報増とともに、価値観が多様化し、若者の職業選択の幅が増えたことなどが考えられる。
中国では労働者保護を名目に、2008年、労働法が改正され、最低賃金も2年に一度改定される。
このまま進めば、人件費コストがますます経営を圧迫し、
よりコストの安い地域への工場移転や工場閉鎖を迫られかねない。
1980年代から2000年代にかけて、日本の企業が中国を中心とした東南アジアへ工場移転したことで、
企業城下町は空洞化し、失業者が増えた。そして、消費が減り、デフレが進み、日本経済自体が沈没しかかっている。
中国は高度成長の真っただ中にあるが、「大幅賃上げ要求」を勝ち取った今回のようなケースを発火点に、
ストライキの波はさらに拡大していくのではないだろうか。
■以下、「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」から転載。
「中国各地で実現している労働賃金の値上げ交渉の成功、待遇改善要求のストライキは、
各地で現実に賃金上昇をもたらした。これは中国国内の消費を押し上げる効果がある」
(ウォールストリート・ジャーナル、6月9日)。
「北京市政府は最低賃金を月給ベースで960元に改訂したが、沿岸部平均でも850元に上昇している」
(ヘラルドトリビューン、6月8日付け)。
いきなり賃上げを要求されストライキに見舞われていたホンダでは6月3日にいったん、ストライキ解除、
中国にある四つの工場で創業が再開された。ホンダは24%の賃上げを認めた。
ホンダは中国国内に4つの大工場を持ち、部品供給などで一貫しているため、
ひとつの工場で操業がとまると他の工場に連動する。
四工場の稼働再開は2週間ぶりだったが、各地の部品工場が断続的にストライキのため、
基幹部品の供給は止まったまま。
ホンダによれば中国で2万台の生産に遅れが出た。
ところが6月8日に、またも別の工場でストライキが発生、4工場のうち2工場の操業が停止に追い込まれた。
これは排気管を製造している仏山市工場で連鎖反応的に7日から賃上げストライキに突入したためで、
広東省広州市の2工場では「オデッセイ」「アコード」を生産。ストに突入した部品工場の従業員は約600人。
▲10年第一四半期、労働賃金は35%あがった
従業員42万人もの労働者を抱える富士康(台湾系)の深セン工場では自殺者が十人を超え、
世界的ニュースと発展したが、
賃金50%アップをのんで、いったん収束した。
深刻な労働不足は、同社のリクルート状況の苦境にもあらわれ、毎月二万人が去って、
同時に二万人を補充するという自転車操業なのだ。中国人は10円でも給料が高いと聞けば翌日に他社へ移動する。
「所属企業への忠誠心? なにそれっ、」という感覚である。
富士康のオーナーである台湾の鴻海精密トップは、
「いよいよ分水線にきた。年内に給料を二倍にしなければならない状況だ。
中国の安い労働市場に生産を依拠する経営方針はそろそろ限界だろう」と
ウォールストリート・ジャーナル紙のインタビューに語っている(前掲日付け)。
富士康(英文名=FOXCONN)は中国全体で80万人の従業員をかかえるマンモス、
iPadの基幹部品をアップルに、
コンピュータ部品をデルに納めるほか、
多くの電子部品を任天堂やHP(ヒューレット・パッッカード)などにも納入する。
したがって賃上げの影響は製品コストに跳ね返るため電子産業全体におよぶ。
輸出代金にも響き、ひいては人民元切り上げ圧力への導火線になる。
こうした華南の労働市場の異変は連鎖反応を呼び、
TPVテクノロジー社は年初に15%の賃金アップをみとめたばかりなのに、さらに20%アップを予定している。
同社は世界最大のコンピュータ・ディスプレイの製造企業である。
同時に外資系企業の賃上げは中国国内企業、ローカルの零細企業へも影響をあたえ、
9−27%の賃上げが達成されているという。
労働者が声を上げ、賃上げを要求してストライキをやると、
経営側はアキレス腱を衝かれたかたちで次々と賃上げをのまざるを得ないのも、
華南一帯がきわめて深刻な労働不足に陥っているためである。
最大の原因は「一人っ子政策」の悪影響だ。
過去三十年、若者の労働人口が急激に減り、さらには大学進学ブームのため、ブルーカラーの労働市場は払底、
大学新卒はブルーカラーの三倍が常識だから、中国の若者はブルーカラーになりたがらないからだ。
また中国政府がストライキ収拾に消極的な理由は、労働者の不満をガス抜きする目的があり、
ネットや携帯電話の情報空間に広がる共産党幹部の腐敗、太子党の富の寡占などへのねたみを和らげる効果として、
むしろ背後で奨励している気配がある。
■「Skipper Johnの中国ビジネスブログ」から転載
今日のニュース:↓↓トヨタの中国主力工場生産停止、部品工場ストで
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20100618-OYT1T00999.htm
・トヨタ自動車は、中国天津市のトヨタ系部品メーカー工場で発生したストライキの影
響で一部の部品が調達できなくなり、中国の主力工場の天津工場で生産を停止したこ
とを明らかにした。ストは継続中。
・ストが発生したのは、トヨタグループの豊田合成の現地工場で、自動車の運転席周り
などのプラスチックパネルを生産している。
・トヨタの天津工場は、小型車「カローラ」や高級車「クラウン」の生産拠点で、2009
年には約38万3000台を生産した。中国市場の拡大を受け、1〜4月のトヨタの中国全
土の生産台数は、前年同期比2.2倍の約26万6000台に拡大している。
※ポイント: 更に強くなる賃上げの圧力
5月には中国のホンダ直営の変速機工場でストライキが発生、ホンダが中国で操業する
4カ所の組立工場すべての操業が一時停止しました。
↓↓ホンダの中国工場の操業が停止─変速機工場のストで
http://jp.wsj.com/Business-Companies/Autos/node_65557
共同通信によれば、日本プラストは日産自動車やホンダにハンドルやエアバッグを供給
している中国広東省の工場「中山富拉司特工業」で6月17日から賃上げ要求ストが起きて
いることを明らかにしました。
↓↓日本プラスト:中国の工場で17日から賃上げ要求スト−共同
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=aWEqxUBbJOE8
今日のニュースによると、天津市のトヨタ系部品メーカー工場で発生したストライキの
ため、トヨタ合弁の天津工場の操業が停止しました。
相次ぐ自動車関連企業でのストライキの主な要求は賃上げです。英字紙チャイナ・デイ
リーは、中国のGDPに占める給与の比率が年々減少していると指摘、政府が新たな条例
を作り、給与を引き上げる必要があると述べています。
↓↓自殺とストライキが明かした中国労働者の苦境=政府は介入を急げ
http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=42527
ストライキを行う労働者もウェブや携帯電話を活用してさまざまな情報交換を行い、効
果的なストライキを展開することが多くなっています。
すでに賃上げ要求に応じる企業も出ています。携帯やパソコン組立て大手の富士康国際、
従業員の自殺が相次ぐ広東省深セン工場で一部従業員の賃金を 67%引き上げると発表、
1週間で2度目の賃上げとなり、基本給は当初の2倍に引き上げます。
↓↓富士康が基本給2倍に
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100608-00000010-nna-int
中国政府は2011年から始まる次の5カ年計画に労働者の賃金を現在の2倍に増やす目標
を盛り込む予定で、労働争議の多発を受けた賃上げの動きを政治的に後押しする動きが
出ています。今後賃上げの圧力が更に強くなっていきます。
「中国、賃上げ後押し 5カ年計画で賃金2倍 労働争議多発で」
https://mail.google.com/mail/?hl=ja&utm_source=ja-hp&shva=1#inbox/1291e7c2300870f5