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老夫婦の微笑み

上海郊外にある南翔は、小籠包(ショウロンポー)発祥の地と知られる。上海在住の日本人らが月一回集まり、さまざまな中国料理を楽しむ「B級グルメの会」で、南翔の点心を堪能した帰りだった。

老夫婦が手をつなぎ、ゆっくりと歩いている。果物でも買ったのか、おじいさんの手には黄色い小さな袋、お婆さんの手には杖。そして、理由は分からないが、二人が向かい合って微笑んでいる。

北京や上海などの大都市では離婚率が30%を越え、さらに増加傾向にあるという。一人っ子政策による自己中心的甘えやわがまま、女性の経済的自立、核家族化、あるいは男女平等の権利意識がそうさせるのか。

あの老夫婦の若いころ、中国は文化大革命で混乱の極みにあった。そして、現在の経済発展と平和な時代が訪れた。

老夫婦の横には、行き過ぎる二人連れの少女、その近くに男の子。彼女らも年老いた時、あのような、穏やかで、仲睦まじい笑顔を見せるのだろうか。

干し魚と古い自転車

中国江南地方最大の水郷古鎮「周庄」へ日帰りバスで行った。上海から約70キロ、車で約1時間20分程度。周庄は900年の歴史を持ち、かつては江南の水運、商業の 要衝として栄えた街である。しかし、現在は観光地。俗化した印象を免れない。

古鎮を出て、帰りのバスが待つ駐車場へ向かっていた。干し魚と古い自転車が目に入った。高層ビルが林立する上海では、決して目にすることができないだろう。

二枚に開いた川魚は、焼き魚として今晩のおかずになるのか。この古い自転車は、まだ現役なのか。観光地の雑踏からほんの少し離れた所に、静かで生活を感じさせる1シーンがあった。

旅の醍醐味は、ここにある。決められたツアーコースやガイドブックをなぞって、有名な観光地を見て回るもいいが、やはり、そこで生活を営む庶民の息遣いが感じられる偶然の出会いこそ、心がときめく。

同じく周庄。この民家は、明か清の時代に建てられたものだろうか。江南地方の家屋の特徴である黒瓦と白い漆喰のモノトーンを見ていると、その時代に紛れ込んだ錯覚に陥る。

少し曇天だったせいもあり、この色調は墨絵にも見えるが、写真右下を見ると、二台の自転車が停めてある。今でも、この家屋の中で生活しているらしい。住人は変わっても、この家屋は長い歴史の風雪を耐え抜いてきた。

少年の笑顔

北京で日本語を学んでいたS君は、三国志の舞台となった湖北省荊州出身。武漢に遊びに行くと連絡すると、わざわざ時間をかけて空港まで長距離バスで迎えに来てくれた。

武漢は見るところが多い。亀山・蛇山、黄鶴楼、夏王朝の創始者・禹(う)王の廟、古琴台・・・、近代では、辛亥革命のきっかけとなった武昌蜂起の地としても知られる。武漢長江大橋、武漢大学、湖北省博物館なども回った。

S君の案内でカメラを手に漢口の繁華街を歩いていたとき、二人の少年が写真を撮ってくれと声をかけてきた。アイスクリームを口にする彼らの自然な笑顔が実にいい。

仏教に「和顔愛語」という言葉があるが、笑顔は硬くなった人の心を溶かし、ほっと一息つかせる効用がある。上海では、このような笑顔を見ることはなかった。

大五郎カット

中国人の歴史的髪型のイメージは、兵馬俑の兵士と清の時代の辮髪がまず思い浮かぶ。では、子供たちは当時どんな髪型をしていたのだろう。

上海市内を歩いていても、幼い男の子の髪型は日本と変わらない。それにしても、この子の親は、どういう意図でこのような髪型にしたのか。まだ好き嫌いの分別がつかない子供だからと、面白がってしたのだろうか。

この髪型を以前見たことがある。そう、昔のテレビドラマ「はぐれ狼」に出てきた「大五郎カット」だ。ただし、「大五郎カット」は後ろ髪もあるが、この子は前髪だけで少し違う。また吉祥図案として中国の切り絵や年賀状には、このような髪型の子どもが描かれていることがあるが、実物を見たのは初めてだ。

すごいバランス!

リヤカーのタイヤが、今にも悲鳴をあげそうだ。しかし、左右前後うまくバランスを考えて、椅子を積み上げている。

車に積めば簡単なのだろうが、車なんてないし、そもそも免許証もない。どのくらいの距離を引っ張っていくのか。

こんな所で昼寝!?

こんな所で昼寝!?まあ、なんでもありの中国だから、別に気に掛ける必要もないだろうが。

彼は、何の仕事をして金を稼いでいるのか。昼間から寝るのは何故なのか。三輪車の荷台に何を積むのか。警察は注意しないのか。いくつかの疑問が思い浮かぶ。

美しい誤解

上海では路上で若い男女が人目も気にせず、抱き合ったり、キスしている場面を時々みかける。二人の気持ちが絶頂の瞬間である。

しかし恋愛関係は、時の流れとともに「大好き!」が「大嫌い!」になることもある。そして、その距離が再び近づくこともあるし、二度と会わなくなることもある。評論家の亀井勝一郎は、「恋愛は美しい誤解」と言った。

日本人が多く住む古北を、とんこつラーメンを食べようと歩いていた。男が首を前に出し、女が左手を腰に当てている。真剣にお互い相手の目を見ているが、愛しい気持ちで見つめ合っているのではない。また憎しみを込めて、睨み合っているのでもない。大声で罵り合っている様子でもない。親しい若い男女の「ちょっとしたこと」からの言い争い、痴話げんかだろう。