紅葉と清流の秋月

晩秋に色づく旧城下町

朝の雨を残した深紅のモミジ、青い空を背景にした白い雲と緑の山、葉を落とした橙(だいだい)色の柿の実、苔むした薄緑の石垣、銀杏の葉が落ちた黄色の屋根、そして透明の清流…。
晩秋の旧城下町・秋月はいま色彩豊かな風景に覆われ、ゆったりとした時間と風情を醸し出している。

甘木鉄道に乗って

JR基山駅から甘木鉄道に乗り換え、終点の甘木駅に向かう。1車両だけのワンマンカーが田畑や住宅地を縫って走る。30分ほどで到着。駅前から秋月行のバスに乗る。しかし、一時間に一本しか路線バスは来ない。この日は快晴。小高い山や清らかな野鳥川など車窓からの景色が、小さな旅気分を徐々に高めていく。

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散策

郷土館前バス停で下車し、秋月城の大手門だった黒門に向かって、メインストリートの杉の馬場をゆっくりと歩く。この道は春は桜並木で、紅葉の季節とともに観光客を集める。野鳥川の清流、秋月郷土館、瓦坂、城跡の石垣、長屋門、黒門、武家屋敷、眼鏡橋…。道路沿いに軒を並べる売店では、草木染、葛、新酒なども売っていた。

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裏に道あり…

相場の格言に「人の行く裏に道あり花の山」という言葉があるが、国道322号線を隔てた反対側は観光客はほとんど足を向けない。時間があったので、葉室麟の「秋月記」を思い出しながら、その反対側をぶらぶらと歩いていくと、この周辺にも、まだ緑が残っているモミジや清流があり、自然の美しさに一人感じ入った。

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写真集

小説「秋月記」は、小藩である秋月藩の独立を守るため、毅然と福岡藩に対峙する主人公・小四郎の姿を描く。主人公らが歩いたであろう石段、名産となった葛、長崎の石工が作った眼鏡橋など、小説の中の当時の風景が今も残されている。

薄緑から深紅に変化していくモミジの葉。川底の大きな岩が透き通る清らかな水の流れ。葉を落とし実だけが残る柿の木や櫨の木。寺を囲む苔むした石垣に立てかけられた一本の竹ぼうき…。それぞれに興趣を覚える。

秋月中学校のグランドでは、今はほとんど見かけない二階建ての木造校舎を背景に青いジャージを着た生徒らが体育の授業を受けている。彼女たちも、いずれこの場所を去っていくのだろうか。中国語が聞こえてきた。キャノンの一眼レフを手にしている。こんな山間の地にも外国人観光客が訪れるのか。

今回初めて行った秋月。日帰りの小旅行だったが、「色づく晩秋の旧城下町」の史跡や景観は、しばしの充実した時間を過ごさせてくれた。

※写真クリックで拡大、鮮明に。

                    

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